年の差契約婚~お別れするはずが、冷徹御曹司の愛が溢れて離してくれません~
「俺は……っ」
園城さんが何かを口走ろうとした瞬間、私の手に持っていたスマホが振動した。
一度場無視を決め込むも、ブーブーと長く鳴り続けるそれは、ただの通知ではなく、電話である証明。
私は電話の相手を確認させてするため、スマホを裏返しディスプレイを見た。ディスプレイには、【朝日啓志】の文字が表示されている。
どうしてこんな時に朝日くんから連絡が!?
ちらりと園城さんに視線を向けると、彼は私の振動するスマホの画面を見つめていた。恐らく着信の相手を園城さんも見たであろう。
ぎゅうっとスマホを握りこの場から出て電話に出るか迷っていたところ、園城さんが私の手を掴んだ。
ーーパシン。
「……っ、園城さん!?」
振り返ると寂しげな表情を浮かべる園城さんがいる。
「ここにいてくれないか?」
私は園城さんを見上げた。
「頼む、出ないでここにいてほしい」
熱い視線と私の戸惑った視線が交差する。
園城さんの獲物を狙うかのような眼差しに射すくめられ、身体が固まる。
目を逸らせなくなり、私は立ちあがろうとした膝をそのまま折った。
それからしばらくすると着信が止み、この部屋に沈黙が訪れた。
園城さんは口を開かず、黙ったままだった。