年の差契約婚~お別れするはずが、冷徹御曹司の愛が溢れて離してくれません~
「ありがとうございました、パンまでいただいてしまって……」
「他人行儀はやめてくれ。もう帰って来ないんじゃないかと不安になる」
眉間にシワを寄せ、心配そうに私を見る園城さんに思わず笑ってしまう。
「帰ってきますから」
「気が変わったりしないでくれよ」
園城さんは靴を履いた私を包み込むように抱きしめた。
「沙織、好きだ。本当は離したくない」
耳元で直球な愛を囁きながら、私の唇に優しいキスを落とす。
「んっ……」
重ねた唇から愛情を注がれ、雰囲気にあてられそうになるのを必死で堪えた。
「帰ったらまた連絡してくれ」
「分かりました」
名残惜しそうに私の手を離すと、手を振って見送ってくれた。
パタンとドアが閉まると、逆に私の方が寂しくなってしまってもう少し一緒にいれば良かった、なんて歩きながら考えていた。
これから私は、園城さんと一緒に新しい生活をはじめる。
彼との生活に不安はないけれど、また元の環境に戻る不安はあった。
お義母さんや、園城さんの立場。父への説明。
きっと考えないといけないことはたくさんある──。