年の差契約婚~お別れするはずが、冷徹御曹司の愛が溢れて離してくれません~
「昨夜のこと……覚えていませんか?」
声がわずかに震えた。酔っていたのは知っている。でもあの時伝えてくれた言葉が嘘ではないと教えて欲しかった。願うように園城さんを見つめた時、ふいっと顔を逸らされた。
「覚えていない」
彼の言葉にすうっと身体の熱が引いていく。あの夜は全てが嘘だったと言われているかのようで、ショックだった。
固まって動けなくなっている私に、追い討ちをかけるように園城さんはいい放つ。
「出てってくれないか」
「……っ」
私は必死に涙を堪えると自分の服を握り締め、園城さんの寝室から走り去った。
自分の部屋にかけこみ、服を握り締めながら、唇を噛みしめる。
一気に虚しさが押し寄せてきて、グッと目頭が熱くなった。
「……っ、う」
私のことをもっと知りたいと言ってくれた時、すごく嬉しかった。
夫婦としての時間が初めて動き出したのだと思った。ようやく一から進んでいける。
だけど、園城さんは全く覚えていなくて、それどころか昨日の自分を否定するかのように、私を追い出した。