年の差契約婚~お別れするはずが、冷徹御曹司の愛が溢れて離してくれません~
昨日私が見ていた園城さんは、本当の園城さんじゃなかったんだ。
我慢しきれなかった涙が頬を伝って、流れてくる。冷え切った関係に熱を灯すのなんて簡単ではないのに、期待してしまった。
ああ、私ってバカだ。
涙を必死に拭い、服に着替える。
それからしばらくすると、玄関のドアが閉まる音が聞こえてきた。
園城さんが仕事に行ったのだろう。
見送りをしなかったのは初めてだ。
でもきっとそれも園城さんは気にしていないだろう。
だって私に興味など無いのだから。
「あ……」
乱れた髪を結ぼうと、手首に触れると、髪ゴムがないことに気がついた。
園城さんの部屋だ……。
束ねていた髪を彼が解いて乱雑に髪飾りをベッドの隅に追いやった。その性急さも求められてるようで嬉しかったのに、今はもう虚しい感情しかない。
私はもう一度園城さんの部屋に戻ってきた。
彼のベッドはキレイにベッドメイクされていて、昨日の面影は一つも無かった。
キレイに掃除されている、それすらも無かったことにされたみたいて虚しくなった。
ベッドの横にある小さなテーブルに丁寧に置かれた髪飾りを手に取り、その部屋を後にする。
惨めで虚しい。
こんな結婚生活を続ける意味はどこにあるのだろう。