年の差契約婚~お別れするはずが、冷徹御曹司の愛が溢れて離してくれません~


そりゃ、期待をしたって無駄なわけだ。

一緒に暮らし始めたら、何か変わるかもしれない。

いつもと違うことが起きたら園城さんとの関係がよくなるかもしれない。
でもそんな明るい生活なんて待っていなかった。

だってそうだ、園城さんは私に愛なんて一切持っていないのだから。

でもこれで、思い残すことは無くなった。


「そうですよね。変なこと聞いてしまってすみません……」

離婚届けは園城さんが自分のいいタイミングで出しに行くということで話がついた。

自分の落ちついたタイミングで親族にも告げるらしい。

少し申し訳ない気持ちになる。園城家の長男の名前に傷をつけたのだから。

でも、これでほんの少しだけど前に進めた気がした。

「短い間でしたけど、ありがとうございました。

私は園城さんに、情けなくてもいいからしっかりと思っていることを言葉にして伝えて欲しいって思ってました。今更言うようなことではないんですけど……」

私の言葉にも彼は一言、そうかと返した。

言っても言わなくても変わらない言葉だったかもしれない。

それでも最後に伝えておきたかった。

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