年の差契約婚~お別れするはずが、冷徹御曹司の愛が溢れて離してくれません~
 


それから1週間かからず、私は都心から離れたアパートを契約した。

元々荷物はあまり多くなく、身一つでの引っ越しだ。

私が出ていく日を伝えると、わざわざ時間を作ってくれたのか、彼は珍しく家にいてくれた。

「お世話になりました」

深々と頭を下げて玄関のドアを出ようとする。
きっとああ、とか当たり障りのない返事が返ってくるだろうとドアノブに手を伸ばす。

すると、パシンと腕を掴まれた。

「園城さん……?」

ゆっくり振り返れば目の前には園城さんの顔がある。

その顔は相変わらず、何を考えているか分からないけど、少し寂しげな表情にも見えた。

「もし、生活に困ったら迷わず連絡をくれ。出来ることならなんでもする」

「なっ……」

それは、私が一人で暮らす能力がないとでも?それともせめてもの同情か。

なんてお節介な。
私は無理矢理笑顔を作った。

「もう夫婦じゃないんですから、お気になさらず」

「それもそう、だな……」

目線を床に落とし、手がゆっくりと離れていく。

玄関の扉を開いて軽く会釈をすると、私はこの家から出で行った。

明るくて、これからの一歩を踏み出すにはピッタリの天気だった。

きっとうまくいく、今はそんな気がする。

こうして私は新しい一歩を踏み出した。



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