年の差契約婚~お別れするはずが、冷徹御曹司の愛が溢れて離してくれません~
「園城さん、本日のお食事は……」
「食事は外で食べてくる。遅くなるからお前は先に寝てろ」
「分かりました」
パタンと玄関のドアが虚しく閉まる。私たちは夫婦だ。だけど行ってきます、いってらっしゃいの言葉は私たちの間には無い。
それどころか顔を合わせて食事をしたり、休日に一緒に外出したりすることもなかった。
あるのは愛の無い結婚をしたという事実だけ──。
紙切れだけで繋がっている結婚だ。
「今日も遅いのかな……」
園城悟さん、27歳。
国内トップの自動車メーカー園城財閥の息子で、今は部長として海外を飛び回ったり商談をしたりと何かと忙しい生活を送っている。
一方私は、鮫島沙織、26歳。
クセっ毛の髪を肩下まで伸ばし、身長は一六〇センチ程度で体形も見た目も平均的だ。
私の母は3歳の頃に病死していて、父は、男手一つで私を育ててくれた。
父の会社は独立した製鉄所。小さいながら、特殊銅の製造をメインに行なっているが、物流費の高騰や円安の影響を受け、業績は傾いていた。
そこに園城財閥が目をつけ、出資することを条件に、私が嫁としてもらわれることになった。