年の差契約婚~お別れするはずが、冷徹御曹司の愛が溢れて離してくれません~
「今日はありがとうございました」
「ああ、時間を取ってしまってすまなかった」
お店を出てお礼を告げる。コース料理とはいえ思った以上にゆっくり話をしてしまって、気づけば1時間半ほど経っていた。
食事代は事前に支払われていて、私がお金を渡しても受け取ってはくれなかった。
「お元気で。体調にはお気をつけくださいね」
園城さんは会社に戻る前に寄る場所があるらしく、ここで解散だ。
「ああ、キミも元気でな」
そう言われると、なんだか胸が寂しい気持ちになった。
帰る場所はもう同じではない。
今まで帰りたい家では無かったはずなのに、別れると不思議と寂しくなるもんだ。
私は去っていく園城さんの後ろ姿を見えなくなるまで見送った。
"お元気で"
そう心の中でつぶやいて──。
「私も帰ろう」
食事は想像していた何倍も楽しい時間だった。
これから何かない限りは園城さんに会うことはないだろう。
お互いに別々の暮らしをして、別々の道に進んでいく。
だから、最後にこうやって彼の優しさを知れたのは、良かったのかもしれない。