年の差契約婚~お別れするはずが、冷徹御曹司の愛が溢れて離してくれません~
「はぁ」
無駄な事はせず、彼に合う女性を演じる毎日。正直気が重い。
私は朝の身支度を始めた。
園城さんは食べずに出ていってしまうため、一人分朝食の支度をしてそれから、家の掃除。家は2人暮らしなのに8LDKとお城のように広すぎて一日ひとつ掃除する部屋を決めてはピカピカにしている。
もっとも、園城さんはほとんど家にいないので、汚れもあまりないのだけど……。
窓から外を眺める。都内一等地の高層マンションが立ち並ぶ一角に私たちの部屋がある。
今までの暮らしとは違いすぎて、私は窓を眺めて寂しくなった。
こんなに広くなくていい。
もっと顔を見て食事をしたり、会話をしたり、そんな生活がしたい。
夜になり、ガチャっと玄関の扉が開く音が聞こえた。
深夜1時。ようやく園城さんが帰ってきた。私は眠い目を擦って立ちあがり、玄関まで走って向かう。
「おかえりなさい」
私が笑顔を作って言うと、彼はふいっと目を逸らして吐き捨てるように言う。
「寝てろと言ったはずだが」
「あ、でも……眠れなくって」
正直言うと本当は目を開いているのがやっとの状況だった。でも妻として、旦那の帰りを出迎えないのはなんとなく気が引けた。
「無理してこっちに合わせる必要はない」
彼は私の横をすり抜けると、そのままリビングに向かった。