年の差契約婚~お別れするはずが、冷徹御曹司の愛が溢れて離してくれません~
「そろそろ、映画の時間だね」
朝日くんを誘導するように声をかけると、彼は腕時計をちらりと見て「確かに、そろそろ行こうか」と言った。
このまま、そっと退店すればバレずに済むだろう。
出来るだけ音を立てないように立ち上がり、顔を隠すようにして、俯きがちでカバンを取る。
するとその時。
「あっ!」
ガシャンっと大きな音が店内に響き渡った。
私の手からすり抜けたスマホが床に落ちてしまったのだ。
ヤバい。
こんな時に落とすなんて、どうして私っていつもこうなんだろう。
素早く拾って、バレていないか軽く視線をやった時、園城さんとバッチリ目が合ってしまった。
「……っ、」
慌てて俯き、背中を向ける。
背後からガタンと椅子を引く音が聞こえたと同時に手を掴まれた。
「園城さん……」
「どうしてここに?」
そんなの私の方が聞きたい。
答えを戸惑っている間に、心配した朝日くんがこちらに戻ってきてしまった。
「どうしたの?沙織ちゃん」
彼と私を1人ずつ見て、園城さんは何かを悟ったのかパッと手を離した。
「失礼……」
「いえ」
私は軽く会釈をしてカフェを後にした。