年の差契約婚~お別れするはずが、冷徹御曹司の愛が溢れて離してくれません~


「今日はありがとう。楽しかったよ」
「私もです」

後ろめたくて、しっかり目を見て伝えることは出来なかった。

「それじゃあまた……」

「あの、沙織ちゃん」

朝日くんは少し緊張した面持ちで私に尋ねた。

「……また誘ってもいいかな?」

目をまっすぐに見て、素直な気持ちを伝えてくれる。朝日くんのこういうところが好きだ。

「もちろんです」

笑顔を向けると、朝日くんも同じように笑ってくれた。

今日は園城さんと偶然会ってしまったから、途中から楽しめなくなってしまったけど、朝日くんと一緒にいたら、たくさん笑っていられる気がする。

「またね」

お互いに分かれて、家についたことを連絡をするとメッセージのやり取りは何回か続いた。

今度はここに行ってみたいとか、何を食べたいとか、そんな些細なやり取りが楽しかった。

次に会う時は全力で楽しむんだ。
でも……。

『すまない……』

勢いよく掴まれた手の温もりがまだ残っている。

園城さんと一緒にいた女性は、彼とどんな関係なんだろう。

園城さんは彼女には愛の言葉を囁くんだろうか。彼女の瞳は真っ直ぐに見つめるんだろうか。

想像して、チクンと心が痛くなるのはどうしてだろう。

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