年の差契約婚~お別れするはずが、冷徹御曹司の愛が溢れて離してくれません~
「も、もしもし」
緊張していていないように装ったけれど、少し声が震えてしまった。
「もしもし、元気か?」
耳に心地よく響く落ちついた声。電話越しに園城さんの声を聞くのは久しぶりだ。消して柔らかい声じゃないものの、不思議とこの声を聞くとホッとする。
「あ、はい……元気です」
でも今はそれどころじゃない。
園城さんが何の話をしだすのか、気が気じゃない無かった。
この間、朝日くんと一緒にいるところを園城さんには見られているし、園城さんもキレイな女性と一緒にいた。
あの件に触れてこないはずがない。
「この間は……」
ドキリと心臓が鳴る。
やっぱりこの間のこと……?
「すまなかった。まさか会うとは思わなくて失礼なことをした」
「い、いえ」
何か聞かれるんじゃないかと身構えていたが、園城さんはそれっきり前に会った時の話をしなかった。
要件はこのことじゃないってこと?
「実は頼みたいことがあって連絡したんだ」
「頼みたいこと?」
私は拍子抜けしたように彼の言葉を繰り返す。
「来週友人の婚約パーティーがあってな……仕事が立て込んでいて、まだ身内にも離婚したことを言えてないんだ。欠席してもいいんだが、学生時代からの付き合いだから悩んでいて」
なるほど、そういうことか。
大きなパーティーとなると妻のいる園城さんが一人で参加するのはおかしな話だ。