年の差契約婚~お別れするはずが、冷徹御曹司の愛が溢れて離してくれません~
「別にまだ残ってた。はやく向こうに行ってくれ」
「すみません……」
私は逃げるように脱衣所を後にした。
「はぁはぁ……」
リビングにヘナヘナと座り込む私。心臓がバクバク音を立てている。
ちょっと見えただけだけど、ガッチリとした筋肉質の肉付きに、首筋に落ちる水滴、艶やかで、色気を彷彿とさせる身体。
「あんなにガタイがいいなんて思わなかった……」
休みなく働いている彼があんなに鍛えられた身体付きをしているなんて……思わずドキドキしてしまった。
私たちは未だに身体の関係は無い。
園城さんは寝室で一人で寝て、私は自分の部屋にもベッドが置かれていたことから、そこで寝るようにしている。
求められることもなければ、あんなことでドキドキしてしまうほど、耐性が無かったりする。
園城さんの身体……すごく男らしかったな。
脳裏に焼き付いて離れなくなったそれを必死に忘れようと首を振る。
すると、脱衣所のドアが開き、髪を乾かし終えた園城さんが出てきた。
緊張感からか、無駄に背筋を伸ばしてしまう。園城さんは私の背中に向かって一言だけ言った。
「寝る」
「あ、はい……おやすみなさ……」
私の言葉を聞き終える前に、園城さんはすでに背中を向け寝室に向かってしまった。
いつまでも距離は遠いまま。
結婚したのだから、妻になったのだから、関係を築いて行きたいと思ったのに、私と園城さんは取引先の相手よりも距離が遠い。