年の差契約婚~お別れするはずが、冷徹御曹司の愛が溢れて離してくれません~


別に気にする必要もない。
園城さんが必要ないと言えばそれでいいのに……。

はあっと息づくと、白い息が出てきて外の寒さを実感する。
でもまだここで休んでいたい。

華やかな人がたくさんいる場は息が詰まる。彼と釣り合うような女性になるために努力をして来たけれど、そもそも住む場所が違うのだから、どんなに背伸びをしても無駄だった。

まだ愛されていたら、自信を持てたかもしれないが、それも私たちの間には無い。


元々無謀な結婚だったなと苦笑いした。

遠くを見つめボーッと景色を眺めていた時、誰かが私に声を掛けた。

「ドレス似合ってるね」

振り返ると、そこには背の高い男の人がいた。

艶のある黒髪に、綺麗な二重の目。人目を惹く華やかな容姿に色気を含んだ笑顔を浮かべる男の人。その人はワイングラスを手に持っていて、残りのシャンパンを一気に煽った。

こういう場で初対面なのに気軽に話しかけられることは少ない。もしかして、どこかで会ったことあるっけ?

「あの、失礼ですがお会いしたことがありますか?」

「うん、僕も何度かこういう場に参加していたんだ。何度もキミを見かけたよ」

こんなに目を惹く人を覚えていないなんて、私も相当身が入っていなかったんだと反省する。名前を聞き出そうと思ったら、私よりも先に彼が口を開いた。

「どう?離婚した後にもう一度仮面夫婦演じるのは」
「……っ!」

私は目を見開いた。

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