年の差契約婚~お別れするはずが、冷徹御曹司の愛が溢れて離してくれません~


園城さんはどう伝えようか、考えながらも観念したような顔で言った。

「そうだな。面白がってる節はあるが、アイツは嘘を言う男ではない」

大事な人の前では特に不器用だと言っていた吉野さん。

ってことは、私を大事な人だと思っていたということ……?

そうハッキリと聞きたかったけれど、それを聞いても何にもならないと気づき、私は我に返った。

もう過去のことだ。
こんなこと聞いても何の意味もない。

「それだけ聞けて良かったです」

私は小さく笑顔を作った。

何もかも完璧で感情を出さない人なんだと思っていた。
今日それが勘違いだったと気づけただけでいい。

「今日……マイルス・モートのドレスが着れてとても嬉しかったです。あのドレスは私が大学生の頃からの憧れのドレスで、一度着てみたいと思っていたので」

「そうか」

前を見ながら一言だけ返事をする園城さん。

「俺も一度キミをが好きだと思うものを用意出来たらと思っていた。キミは何でも着こなすが、やっぱり似合うと思ったものは一層美しい」
「そ、そんな……やめてください」

急に褒められ、恥ずかしくなる。
私のために選んでくれたドレス。1回きりだと分かっているのに、似合うと思って選んでくれたんだ。

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