年の差契約婚~お別れするはずが、冷徹御曹司の愛が溢れて離してくれません~
彼女がタクシーに乗り、去っていく姿を見つめる。
「行ってしまったか……」
俺はタクシーがいなくなった後しばらくぼーっとその場を見ていた。
久しぶりに彼女と会うことになり、随分と浮かれていた。
結婚生活の後悔を取り返すかのように、彼女に似合いそうなドレスを選び、彼女が喜びそうな菓子折りを用意した。
もう帰る場所は同じではないのに。
彼女と会うことも無くなるだろうに。
未練タラタラで情けない。
『どうですか?』
くるりと回ってドレスを見せてきた彼女の姿が目に焼き付いている。
息を飲むほど美しく、思わず時が止まったかのようだった。
似合っている。
そんな丸く収まった言葉を掛けたが、本当はもっと目を奪われて、それから自分のものにしてしまいたいくらいこみ上げてくるものがあった。
それを結婚している時に伝えられたら良かったのかもしれないが、今はもう遅い。
後悔しても仕切れない気持ちを俺はずっと抱えている。