年の差契約婚~お別れするはずが、冷徹御曹司の愛が溢れて離してくれません~


今思えば最低だ。

しかし、仕事はやり甲斐があった。
父の会社ではあるものの、会社を任されているためある程度の自由が効く。

父のやっていることをなぞるのでは無く、自分にしか出来ないことを探そうとした。

海外シェア率を上げるため、小さな会社にも目を向け営業先を増やしていった。

ちょうどその時に目を付けたのが鮫島製鉄所だ。

独立した小さな部品メーカーの会社ではあるものの、特殊な銅の製造や人工衛星の部品を取り扱っていて、将来的に考えると手を組むのに越したことは無い。

最初は軽い気持ちで訪ねたのだが、そこにいた女性に目を奪われることになるとは思わなかった。

「わざわざ遠いところから足を運んでいただきありがとうございます」

ほんのりクセがあり、肩下までの艶のある髪に、やんわり笑いかける時に出来るエクボ。迎えてくれたのは、沙織であった。

沙織は当時から目を惹く女性で、一度見ると吸い込まれそうになる透明な瞳や、太陽のように笑う笑顔が魅力的であった。

会ったその瞬間から、ドキッと強く胸が音を立て、なんとも不思議な気持ちになったのを覚えている。

今思えば、その時から彼女に特別な感情を持っていたんだろう。

「こんな小さな会社なのに園城悟様
が直々にいらっしゃるなんて驚きました。私、鮫島沙織と申します」

名前を聞いて社長の娘であること、歳は自分の一つ下であることを教えてくれた。


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