年の差契約婚~お別れするはずが、冷徹御曹司の愛が溢れて離してくれません~
「せっかく来ていただいたのにすみません……実はたった今、トラブルがあり、社長が外しておりまして」
「後の予定は無いので、もしよろしければお待ちしていますよ」
「本当ですか?今、お茶をお持ちしますので、お待ちください」
待っている間、彼女と話をした。
彼女は、この会社の経理や広報を担当しているということ。社員の高齢化が進む中、自分の若さを活かしたことが出来ないかと常に探しているらしい。
自分と同じ考え方に親近感が湧いた。
「もう営業だって必要ないのに、こんな小さな会社まで目を向けてくれるなんて嬉しいです」
「いつまでも同じ状況で勝ち抜けるほどこの国は甘く無いですからね」
「それもそうかあ……」
話を聞くことが上手いのか、普段話さないことまで口をついで出てしまう。
少し喋りすぎたか?なんて思っていると、彼女は嬉しそうに言った。
「園城様はこのお仕事が好きなんですね」
好き?
一瞬困惑した。
そんな風に思ったことは一度も無い。
「だってこんなに社員のことと会社のことを考えているじゃないですか」
たった少し話しただけなのに、彼女の言葉がすっと心に入ってきて、張り詰めていたものが緩んだような気がした。