年の差契約婚~お別れするはずが、冷徹御曹司の愛が溢れて離してくれません~
そんな風に捉えてくれる人もいるのか……。
自分は大学卒業後、父の会社に就職することが決まっていた。
とは言え努力もしたし、会社のことを知る一番の人物になりたいと思っていたが、ついて出るのは「御曹司はいいよな」という言葉。
そんな言葉は小さな頃から言われ過ぎて慣れてしまったが、自分が努力をいくらしたところで「ズルイ」で片付けられてしまうことに不満を持っていた。
きっとその不満を持つ人たちに会社が好きなんだと思わせてこそ、この会社を大きくしているのだと思った。
「そんな風に言っていただき光栄です」
「いえ、私も気持ちが分かります」
少し苦くも、笑顔を見せる彼女を見て再び胸がドキっと音を立てた。
彼女はどんな人生を歩んで来たのだろう。
どんな人物なんだろう。
もっと知りたい。
知ってみたい。
人に対して初めて興味を持った。
しかし、それを聞き出すのには、残ったこの時間では足りない。
社長が戻ってきてしまい、すぐに商談は始まった。
ほとんど彼女から話を聞いていたことともあり、話はスムーズに進んでいった。
売り上げを見ても分かるが、鮫島製鉄所は経営が厳しく、やっていくのがやっとの状態。
「後1年、2年続けばいい方だ」と社長は言葉を溢す。