年の差契約婚~お別れするはずが、冷徹御曹司の愛が溢れて離してくれません~
材料費や運送費の高騰は重大な問題だ。特に独立した会社には大きな痛手になるだろう。
「もしよろしければ、うちと手を組んでいただけませんか?補助金もこちらから出資させていただきます」
「いいんですか……!」
こうして鮫島製鉄所と手を組むことが決まった。
しかし帰宅後も頭から彼女の影が離れなかった。混み入った話をしたわけじゃない。
ただの雑談で会った時間は1時間にも満たないほど。それなのに、彼女のあの笑顔が頭から離れないのはなぜだ。
俺はこのモヤモヤした気持ちをどうにか晴らしたく、吉野が経営するBARを訪れた。
彼は俺の話を聞くと、シェイカーでシャカシャカ振りながら、今の俺にピッタリな酒を用意してくれた。
「ネグローニ」というらしい。
ジンとカンパリ、それからスイートベルモットでつくるカクテルで、意味は「初恋」を表すという。
「甘すぎるな」
今飲みたい酒はサッパリしたものなのに、甘口のカクテルが舌に残って抜けない。
「そう、甘い恋に落ちたってことさ」
「まだ1時間しか会っていない相手だ」
「運命の恋って知らないの?」
自由人な彼は、俺と違って決められた道があっても、それを蹴ってまで自分のやりたい道に進んだ。昔から適当なところはあるが、俺に対して的確に物を言ってくる。
「だいたいさ、悟が人に興味を持つこと自体あり得ないでしょ?
これは100パー恋だね。御曹司のおぼっちゃまも運命の恋をするってわけだ」
「茶化すな」