クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
「そういえば、氷室さんはお一人でこの船に? 日本人がいると思わなくて驚きましたよ」

 赤いピアスをしたバーテンダーが、私と安藤さんの前にグラスを置いていく。

「いえ、夫と一緒に」

 私の左手の薬指には結婚指輪がはまっているけれど、意識しなければ案外目につかないのかもしれない。

「なんだ、旦那さんがいたんですね。ちょっと残念だな。運命の出会いかと思ったのに」

 冗談めかして言われるも、少しもやっとした。

 私に夫がいなかったら、彼は運命の出会いだと断言したのだろうか。

 大切なものを失くして困っていたから手助けしたのに、ナンパの手段だったのかと思ってしまう。

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