クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
 こんな状態で本音をぶつけてしまったら、いろいろと申し訳ない事になるだろう。

 もういっそ、席を立ってしまおうか。

 だけど身体にうまく力が入らなくてそれも叶わない。

 明らかに異常な状況が恐ろしくなり、スマホで透哉さんに連絡しようとする。でもポーチから取り出そうとしたスマホは、私の手を滑って床に転がり落ちた。

「大丈夫ですか? 氷室さん? 氷室さん──」

 安藤さんに呼ばれているのはわかるけれど、声がとても遠い。

 私はどうしてしまったんだろう? 飲んだのはノンアルコールドリンクなのに、これでは普通のカクテルを飲んだのと変わらない──。



◇ ◇ ◇



< 128 / 250 >

この作品をシェア

pagetop