クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
 夕方になっても連絡がなく、部屋に戻ってこない七海を心配して近くのクルーに彼女の行方を尋ねると、バーに行ったとの事だった。

 船のオーナーでよかったと思うのはこういう時だ。連絡を取り合ってもらえば、すぐに七海の居場所を把握できる。ほかの乗客ならば、もう少し時間がかかっただろう。

 そうして俺がバーへ向かうと、テーブル席の肘掛け椅子にもたれた七海と、彼女に触れようとしている男の姿があった。

 その様子にひどく苛立ちを覚え、胸の奥がちりちりと焦げ付く。

「失礼」

 牽制するように言うと、男は彼女に触れようとしていた手を慌てて引っ込めた。

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