クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
 疲れた溜息のようにも思えて、ますます罪悪感が込み上げる。

「君に触れなければよかったな」

 一度許してもらえたから、彼女を求める気持ちを抑えられなくなってわがままになった。

 受け入れてくれるのをいい事に何度も欲したが、彼女はいつもなにを思いながら俺に抱かれていたのだろう。

「苦しませていたのならすまない」

 もうひと言、『二度と君には触れない』と言うべきなのに、張り付いたように声が出てこなかった。

「嫌、ですから……」

 小さな声が震えていて、胸に強い痛みを覚えた。

 俺が彼女を怯えさせ、戸惑わせ、傷つけていたのだと思うと堪らない──。

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