クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
 思いがけず目にした彼の笑顔は、一瞬で私の心を掴むのに充分な魅力に満ちていた。

 心臓がどきどきする。ついさっきまで普通に話していたのに、これでは彼の顔を見られない。

 そんな顔で笑う人だと知っていたら、契約結婚なんて承諾しなかった。ずっと仕事のパートナーのようにふるまわれていたから、心を動かされる心配をする必要はないと思っていたのに。

 大聖堂へ向かうには階段を上る必要があり、お世辞にも足場がいいとは言えなかった。

 注意して上がろうとした時、透哉さんが私に手を差し出す。

「七海、足もとに気を付けろ」

「あ、うん」

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