クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
「電話? そんなものは来ていなかったが……」

 透哉さんが驚いたように言ってスマホを取り出し、通話履歴を確認するためか、操作を始める。

「電源が切れていたようだ。すまない」

「なんだ、それならよかった。どうしたんだろうって……」

「不安にさせて悪かった」

 え、と声をあげる前に透哉さんが私の後頭部に手を添え、自分の胸もとへ軽く引き寄せる。

 道の端とはいっても、人が行き来する道で抱きしめられて硬直してしまった。

 透哉さんの鼓動が直接伝わってくる。冷静なイメージのある彼からは考えられないくらい心拍数が速くなっていて、それだけ必死に私を探してくれたのだと容易に想像できた。

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