クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
「いつもそうやって笑ってたら、あんまり怖くないかもしれないね。普段は冷徹鬼社長ですって感じだよ」

 透哉さんは手すりにもたれて、軽口を叩いた私の頭に手を置いた。そのまま髪を軽く撫でられる。

 ベッドの上で触れられるよりも、こういうささやかな触れ合いのほうがどきどきして胸の奥が甘く震えた。

今すぐ彼の胸に飛び込んでしまいたい衝動に駆られ、さすがにそこまでは許されないだろうかと切なさを覚えて唇を引き結ぶ。

「つまり俺は、君にそんな男だと思われていたのか」

「……最初はね」

 もう少しだけ彼に近付きたい。滅多に見られない貴重な景色よりも、今は透哉さんを見つめていたかった。

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