クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
「今は違うよ。透哉さんの優しいところもたくさん知ったから」

 透哉さんの目がゆっくりと見開かれたかと思うと、髪を撫でていた手が私の後頭部に回った。

 引き寄せられて彼との距離が一気に縮まり、そっと唇が重なる。

「……え?」

 うっとりするどころか、戸惑いの声がこぼれる。

 彼はずっと、ベッドにいる時以外はキスをしてこなかった。まるでそこにいる間しか、自分の望む行為をしてはならないのだと戒めているかのように。

 だけど今、間違いなく透哉さんは私にキスをしたのだ。

 その証拠に、唇には彼に与えられた甘酸っぱくくすぐったいぬくもりが残っている。

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