クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
 そう聞いた瞬間、波や風の音がふっと聞こえなくなった。

 会話をする二人の男性の声に全神経が集中しているのを感じる。

「それが、なかなかチャンスがなくてな。あそこは決められたクルーしか入れないようになってる」

「おい、しっかりしてくれよ。開かずの部屋が偶然解放されるなんて幸運、そうそうないぞ」

「普段封じられている分、いろいろと厳しいんだよ。こっちに期待するより、あの世間知らずそうな奥さんをなんとかしたほうが早いんじゃないか? ──せっかく知り合い程度に近付けたんだから」

 咄嗟に口を手で覆い、息を呑んでゆっくりと後ずさる。

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