クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
「来ないでください……」

 わかっているのに追い詰められた恐怖で思考が止まってしまい、消え入りそうな声がこぼれ出る。

 考えうる限りの最悪手を打った私を前に、安藤さんは怒った顔をするどころか声をあげて笑い出した。

「おいおい、よりによって奥さんに聞かれたらしいぞ。どうする?」

「どうするもなにも……!」

 バーテンダーが焦ったように言うも、安藤さんは余裕を崩さない。

 このままでは危険すぎる──。

 無理矢理に足を動かし、もつれさせながら逃げようとした。

 どこから行けば船の中に戻れる? 一刻も早く透哉さんのもとへ逃げなければ!

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