クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
 目の前がちらつく。安藤さんの腕を引っかくけれど、びくともしない。

 軽く身体を浮かされて、だんだん抵抗する力がなくなっていく。ちかちかとちらついていた視界が徐々に端のほうから狭まり、呼吸できない苦しさで生理的な涙が目の縁に滲む。

 こんなのは嫌だ。このままじゃ死んでしまう……。

 ──助けて、透哉さん。

 意識が暗転する直前、私は透哉さんを求めて唇を震わせた。

 

◇ ◇ ◇



 七海が誘拐された。

 その事実が判明したのは、仕事を急いで済ませた俺が彼女の帰りを待っていた時だ。

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