クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
 気が狂いそうだった。

 永遠にも感じられる時間がのろのろと進み、誘拐の報告を受けてから三十分が過ぎた。

 オフィサーから再び犯人による連絡が入ったと聞き、室内の子機と繋がせる。

「オーナーの氷室だ。……妻は無事だろうな」

 開口一番に告げると、受話器の向こうから男の嘲笑が聞こえた。

『それが知りたいなら金を払ってもら──』

「いくら欲しい」

 無駄話をしている余裕などなく、食い気味に問う。

 男は一瞬沈黙した後、百万ドルだと告げた。日本円にしておよそ一億だ。

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