クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
 桁違いの額だが、俺を国外にも多くの事業を手掛けている氷室財閥の人間だと知っているなら、むしろ控えめな金額だ。様子見のつもりかもしれない。

「わかった。振込先を言え。今すぐ電子で振り込む」

 ひゅう、と口笛を鳴らす音がした。

『話が早くて助かるよ』

 それを聞いて、ふとこの男が流暢な日本語で話している事に気がついた。

 頭をよぎったのは、七海が酔い潰れた時に側にいたあの日本人だ。

 まさか──と思いながら、男の言う口座番号をテーブルの上の用紙にメモする。

 皮肉にも氷室財閥の人間だから、一億の大金をすぐに動かせた。一般人ならばこうはいかないだろう。

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