クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
 しかし俺が氷室財閥の人間でさえなければ、こんな事件に巻き込まれる事もなかったのだ。

 手早くスマホを操作し、男の言った口座に金を振り込む。

「今、振り込んだ。確認しろ」

『──おい、振り込んだそうだ』

 男の声が少し遠くなり、誰かに向かって話しかけたのがわかる。

 つまり一人で犯行に及んだのではなく、仲間がいるのだ。

 この通話はオフィサーや、もしかしたら沿岸警備隊にも繋がっているだろうから、情報のひとつとして役立ててくれるだろう。

 ほかになにを聞き出せばいい? どうすれば俺は、七海を助け出せる?

『氷室さん、あんたすごいな。本当に振り込むと思わなかったよ』

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