クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
 確認が済んだらしく、男が上機嫌に言う。

「そんな事はどうでもいい。妻の声を聞かせろ」

『残念ながらそこで気を失ってるよ。運ぶのに不便だったもんでね』

 彼女の意識を奪うためになにをしたのか──。

 目の前が怒りで真っ赤になるも、ここで感情的になっては結果的に彼女の助けにならない。

「妻の無事を確認できたら、もう百万ドル振り込むと言ったら?」

 少しでも多くの情報と、時間稼ぎを。

 男の後ろから微かに聞こえる波の音ですら、七海への手掛かりになる。

『そこまで言うならしょうがねえ。──奥さんを起こしてやれ。水でもかければ目ぇ覚ますだろ』

「乱暴な真似はするな」

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