クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
 目の前にこの男がいたら間違いなく八つ裂きにしている。

 狂おしい思いで向こうの出方を待っていると、ごそごそと衣擦れの音がした。

 遠くで『起きろ』『旦那に挨拶してやれ』と声が聞こえるが、俺と通話している男の声ではない。

 しばらくして、七海のか細い声が聞こえた。

『透哉さん……?』

「無事か!?」

 子機を握りつぶす勢いで掴み、必死に呼びかける。

 七海の声はぼんやりしていて、ひどく苦しげだった。

『無事……みたい。怪我はしてないんだけど……』

「すぐに助けてやるから、そこにいる男を刺激するな。……頼む」

 強い祈りを込めて伝えると、七海が軽く咳き込んだ。

< 197 / 250 >

この作品をシェア

pagetop