クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
『今、小型の船に乗ってる。ここにいるのは二人。遠くに島が見える。岩にハート型の大きな穴が開いてて、その島の東に赤い屋根が並ぶ海岸線──きゃあっ!』

「七海!」

 口早に言った彼女の悲鳴が響き、自然と声が大きくなる。

「七海に手を出すな!」

『そういうわけにはいかねえだろうよ』

 七海の代わりに再び男の声が響き、血が滲むほど唇を噛み締めた。

『ったく、余計な事言いやがって。氷室さん、奥さんに無事でいてほしいなら、倍の金額を振り込みな』

「三倍出してやる」

 悲鳴を上げた七海の声はそれ以来聞こえてこない。

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