クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
「荷物になるし、ここで捨ててもよさそうだな」

 私が怖がるところを見たいのか、顎を掴まれて顔を覗き込まれながら言われる。

 両手両足を縛られた状態で海のど真ん中に捨てられたらどうなるかぐらい、簡単に予想できた。

 一瞬怯みかけるも、弱みを見せたくなくて毅然と前を向く。

「私の無事が確認できなくなれば、夫の資産がこれ以上減る事もないでしょうね」

 安藤さん──もうさん付けするのも忌々しい。

 安藤は透哉さんから搾れるだけの金額を要求するだろう。

 彼の資産に頼るのは嫌だったけれど、こんな場所で魚の餌になるわけにはいかない。

 ──私には、まだ彼に伝えていない想いがある。

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