クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
 思考が追い付かずに硬直するも、私を包み込む透哉さんのぬくもりには覚えがあった。

「本当に透哉さん……?」

「そうだ」

 深みのある声と短い返答。間違いなく私の知る透哉さんのものだ。

 そうだとわかった途端、急に込み上げてくるものがあって、自分の感情を抑えられなくなる。

「こ……怖かっ、た……」

 海水でびしょびしょになっていた顔が、流した涙でますます汚れる。

 子供のように泣いてしまう自分を止められずにいると、透哉さんが私をきつく抱きしめたまま背中を撫でてくれた。

「もう大丈夫だ」

「……ふ、ぅ……っ……」

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