クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
 心配そうな眼差しを向けられ、また彼と話せる安堵感にほっとしながら口を開いた。

「たぶん突き飛ばされた時にできたものだと思う」

「……突き飛ばされた?」

 地の底を這うような低い声がして、私が悪いわけではないのにぞくりと震えた。

「で、でも、そんなに痛くないよ。ちょっとたんこぶになってるだけ」

「ちょっと?」

 あ、この言い方は『ちょっとだろうがなんだろうが、怪我をしたんじゃないのか』と思っている気がする。

 その証拠に透哉さんは私への心配だけでなく、怪我をさせたであろう安藤へと思わしき怒りを顔に浮かべていた。

 この人はこんなに表情豊かだったんだ……。

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