クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
 彼の手をほどいて再び顔を覆い、穴があったら入りたい気持ちを噛み締める。

 また強引に顔を見られるかと思ったら、透哉さんは私の髪を撫でて後頭部に手を添えると、自身の広い胸へと私を引き寄せた。

「七海」

「は、はい」

 ぎくしゃくした敬語が飛び出ると、透哉さんがふっと笑みを漏らした。

「今日は大事を取って病院で過ごしてもらう。だが、退院したら覚悟してくれ」

 ひえっと悲鳴に似た声がこぼれるのと同時に、耳の縁に甘い感触が落ちた。

 温かくてやわらかいものが触れ、濡れた音を立てて離れる。

「もう嫌われる心配をする必要はないんだろう?」

「な、ない……かな……?」

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