クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
 中庭が見える廊下を通り、奥の部屋へ通されると、既に両家の両親が談笑しながら待っている。

「遅かったじゃない。先にご飯食べちゃおうかって言ってたのよ」

 朗らかに言ったのは透哉さんの母で、つまり私の義母だ。

 その隣に座っている好々爺然とした白髪の男性が氷室財閥の現会長、透哉さんの父親である。

 二人とも正直に言うと透哉さんには似ていない。

 いつもクールな表情を崩さない透哉さんと違い、彼の両親はにこにこと常に笑みを浮かべていて、温かな印象が強かった。

 ただ、ふとした瞬間に義母の涼やかな眼差しや、ほころんだ義父の形のいい唇から透哉さんとの血縁を感じる。

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