クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
 その言葉に偽りがない事を示すように、透哉さんは私の肩を優しく抱く。

 彼と結婚し、お互いに好きと言えるようになって本当によかったと思うのはこういう時だ。

 私たちの間には育ってきた環境の違いや、氷室財閥の身内として生きるにあたって、もともとの意識の違いがあるけれど、透哉さんは可能な限り私に寄り添おうとしてくれる。

 なにより私は、彼が本当に自分を守るだろうとわかっていた。財産を失ってでも助けようとしてくれた人が、再び私を失いかける真似をするはずがない。

「そうだよ、お母さん。透哉さんがいてくれたら大丈夫。……それに、こんな場所でそういう事を言うのは氷室さんに失礼でしょ」

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