クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
 テーブルの上で固く握手を交わしても、彼のぬくもりに胸が騒ぎはしても、ときめきのようなものは感じなかった。

 これは契約結婚だ。だからプロポーズとなる『結婚してくれ』という言葉も事務的で、握手も締結を示す行為にしかならない。

 握ってから離した手を少しだけ見つめる。

 氷室社長の手は、彼が持つ冷たいイメージからすると意外なほど熱かった。

「夫婦になるからには、もう少し口調も緩めてくれるとありがたい。俺もそうしよう」

「敬語は使わないように、という事でしょうか? 承知いたしました。今すぐに、というのは少し難しいので、次回お会いする時までに慣れておきます」

「そうしてくれ」

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