クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
「……俺よりも君のほうが冷静に見えるな」

 透哉さんが先ほどの言葉の続きを言わずに、少し責めるようにして言った。

「やっぱりだめだった? こういう時、どうすればいいのかわからなくて……」

 考え出すと急に恥ずかしさが増し、手で顔を隠そうとする。

 その前に透哉さんは私の手首を掴むと、シーツに力強く押し付けた。

「あっ……」

 今度は抑えきれなかった声が、戸惑いの音を交えて響く。

「君も俺ぐらい、冷静さを失えばいい」

 確かに今の彼は、いつも会社で見ていた冷徹な印象がない。私が知っている氷室透哉という人は、冷たさと恐ろしさを併せ持った感情のない人だった。

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