クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
 だけど今、目の前にいる彼はまったく違っている。

 瞳には狂おしいほど私を求める甘い熱が宿っていて、唇からこぼれ出る吐息もかすれて妙な色気を帯びていた。

彼がほんのりと頬を紅潮させながら私を見つめている──なんて周りの人間に話したら、ずいぶんと自分に都合のいい夢を見たものだと笑われるに違いない。

 ──どうして透哉さんは、冷静じゃないの?

 疑問を口にしていいかどうかわからずにいると、透哉さんは私の耳に再び口付け、そのまま顎のラインを伝って首筋に熱を刻んだ。

「あ……っ」

 さっきと同じ言葉なのに、私の喉から溢れた声には戸惑いではなく期待と悦びが込められている。

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