花風㊥
そこで良く見れば着ている物に同じ状態が伺える。
襟元や袖も擦り切れて所々に穴も開いていた。
ふとした隙に温かさが触れてくる。
重なる回数が増えて徐々に繰り返す。
「済まない・・・」
漸く吐いた時には複雑な面持ちだった。
「いえ・・・」
互いに彷徨いながらも手は結ばれ、優しく包み込まれている。
けれど、近付く節目に不安を覚えていた。
想いが向けられて居るのは分かっている。
男性が抱える気持ちも噂で聞いていた。
相応しい言葉が見当たらずに黙り込む。
「玉城は何色が好みだ」
不意に問われて狼狽えるも応える。
「私は・・・青が好きです・・・」
「そうか、俺は黒が好きだが、青も悪くない」
また支えられて会話が進み出す。
「今度買って来ます・・・」