花風㊥
部署で朝礼を終えてデスクに向かい企画書に頭を抱える。
何度か商談に出向いて見るも相手の返事が思わしくない。
決断に迫り過ぎているのか、説明不足かと手探り出す。
「こんにちは、貴女が玉城さん?」
その人は探す間も無く目の前に居た。
「・・・はい、そうですが」
突然に現われた姿が機敏な人と似て見える。
「急に御免なさい。戸田さんが不在みたいだけど、他の社員も見当たらなくて・・・」
遠慮気味の声に時計を目にし、覚えたての単語を並べた。
「あの・・・当社の社員でしたら失礼ですが、それ以外の関係者は名前を把握するようにと申し付けられました。伺っても宜しいでしょうか・・・」
吐き出す間に手が差し伸べられる。
「立花香奈です、支社から視察で伺いました。長居はしませんが、各部署に協力要請も兼ねて挨拶回りを行っています。宜しくお願いします」
「申し訳無いのですが、上の者に言付けが在りましたら承ります」
戸惑いながらも目を付けずに放した。
「いえ、特に御座いません。予め知らせて居るので、失礼します」
直ぐに踵を返すも上司が向かって来る。
「久しぶりだな。だが、挨拶は不要だと言ったはずだ」