花風㊥

「お久しぶりです。聞いては居ましたが、念の為に伺いました」

少し弾む声色に何故か足が竦む。

「そうか。無駄足をさせて悪いが、この部署では役に立て無い」

「私はそうは思えません、前回の企画が評価を受けたと聞いてます」

一歩ずつ引き下がる度に震えていた。

「ただ運が良かっただけの話だ。他に聞かれても応えられない」

「承知しました。お手数掛けました、失礼致します」

踵を返して歩く姿が自信に満ち溢れて通り過ぎて行く。
ふとした仕草に押されてデスクを前に余計な事が廻り出す。

脳裏で二人の関係を詮索していた。

互いに知り合いの様子で雰囲気も悪くは無い。
けれど、何処か腑に落ちずに胸が痞えていた。

「取り込み中悪いが、この件について聞いて置きたい」

目の前にしたファイルに罪悪感を覚える。

「承知しました・・・済みません」

慌てて取り繕うも既に遅く、その目は鋭く指していた。

「では、休憩も兼ねて話を聞く」

「承知しました・・・」

上司に謝罪や反省など利かない。
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