花風㊥

社員で騒がしいカフェの隅、隠れて見ても周りの視線が気になる。

「何か飲み物を買って来る。その間に渡した物に目を通して欲しい」

緊張に身を包み込み、落ち着けないまま。
ファイルを手に開くことすら躊躇う。

吐き出す合間に影が足早に駆けて来た。

「珈琲しか無かったが、良いか」

「ありがとうございます・・・」

直ぐに煙草を取り出して問い掛けてくる。

「それで、目を通したのか」

冷静な口調に慌てて開いたファイルに目を伏せた。
それは任された企画の計画書、誰が見ても分かり易く正されている。
今日中にはと見据えた事に落ち込んだ。

「済みません・・・先程まで手を掛けて居たのですが・・・」

理由を吐き出して飲み込む。

「それは特に構わない。だが、商談の話を聞かせて欲しい」

端整な面持ちに現状を伝えて見る。

「その件について今の所は円滑に進んで居ます。ですが、先方から返事を濁されてます。急ぐのは良く無いので様子を伺ってますが、まだ何とも言えません」

そこで眉間に皺を寄せて此方を眺めていた。

恐らく答えは決めている。
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